研究内容2 時空間解析
都市に存在するモノやヒトのうち,大抵のものは常に変化しています.都市化が進むにつれて,空地は住宅や商業施設へと変化し,道路は拡幅され,多くの人が集まるようになります.
にもかかわらず,GISを用いた研究の多くはこれまで都市の静的な側面,つまり,ある一断面を切り取って議論したものでした.このような研究はもちろん大変重要ですが,その一方で,都市の動的な側面,即ち,変化に着目することもまた必要です.そこで最近では,都市の時空間分析に力を入れています.
例えば下の図は,東京都23区内におけるコンビニエンスストアのうち,3大チェーン(セブン・イレブン,ファミリーマート,ローソン)の商圏全体の変化を表したものです.左の図は1990年,真ん中の図は1998年のものです.一見して,商圏の様子がかなり変わっていることが分かると思います.実際これらをGISで重ねてみると右の図のようになり,8年間の間の変化はかなりのものであることが理解できます.
しかし,このように図を眺めているだけでは,変化の様子をきちんと理解することは困難です.そこで,このような「領域」の変化を6つの典型的なパターン(生成,消滅,拡大,縮小,結合,分割)に分類し,整理するという研究を行いました.その結果,1990〜98年の間に,3大チェーンはその商圏ができるだけ細切れにならないようにしながら拡大するという戦略を採ってきたことがわかりました.これは,商圏の拡大戦略において,配送コストの抑制に留意しているということを示しています.
下の2つの図は,東京の新宿〜渋谷・恵比寿へ至る界隈の商業施設の密度を表した図です.左が1990年,右が1998年のものです.この地域は,ここ10年くらいの間に,東京都新都庁や恵比寿ガーデンプレイス,新宿高島屋の開業,「裏原宿」と呼ばれる界隈の発展など,急激な変化を遂げています.しかしながら,これら2つの図を見比べただけでは,このような変化を明確に感じることはできません.
そこで,この間の商業施設密度の変化を,商業施設密度という「山」の頂上の変化という観点から見てみます.つまり,頂上が増えることは,商業集積が分裂あるいは新規に発生することを表し,反対に頂上が減ることは,商業集積が合併あるいは消滅することを表します.GISによってこのような変化を抽出し,図化したものが下の図(左)であり,この8年間に起こった頂上の発生と消滅を表しています.
このように見ると,詳細な変化をよく捉えることができます.ここから,上に挙げたようなオフィスビルや商業施設の開業は,地域の商業構造に大きな影響をもたらす(例えば,周辺に頂上がいくつも発生する)ことがわかります.さらに,上図右は頂上の移動を表したものであり,地域ごとに頂上の位置的な変化がかなり起こっていることが分かります.商業集積の中心が移動するなどの現象は,このような方法で捉えることができます.
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