研究内容1 都市・空間解析
都市空間には,様々なモノやヒトが存在しています.それらの空間分布は何らかの(通常は複数の)要因によって決定されており,要因の差が空間パターンの違いを生み出しています.
下の3つの図は,いずれも横浜市内の商業施設の空間分布を表しています(左から銀行,コンビニエンスストア,ファミリーレストラン).これら3つの分布は明らかに異なっていますが,それは,各商業施設の立地要因(人口分布,鉄道駅,幹線道路など)が異なっているためです.つまり,施設立地要因の具現化したものが商業施設分布であると言えます.とすれば,反対に商業施設分布を調べることによって,その分布を規定している仕組み,背後にある施設立地要因を分析できると考えられます.
そこでこれまで,人口分布(広域的な影響)や鉄道駅など,いくつか単独の立地要因について研究を進めてきました.例えば,上の図のような3つの分布パターンについて,それぞれ人口分布や鉄道駅の場所にどの程度影響を受けているのか(それらの立地要因に対してどの程度敏感なのか)ということを数値として示すことが可能です.これを地域ごとに比べてみると,同じコンビニエンスストアでも都心にあるものは昼間人口依存型,郊外の店舗は夜間人口依存型,さらに郊外のものは幹線道路立地型(自動車利用者を前提とした立地)などと類型化を行うことができます.
商業施設についてはさらに,店舗同士が互いに与え合う影響(店舗の集積による集客効果など)についても興味を持ち,店舗同士の競合,商業集積の階層性,さらには商業集積の形についても分析を行いました.競合については例えば,多くのコンビニエンスストアチェーンのうち,どのチェーンとどのチェーンは競合しがち(対抗意識が強い?)であるか,どのチェーンは自社競合も厭わない攻撃的な戦略を採っているのか,といった事柄を,GISによる空間解析から導いています.また商業集積の階層性というのは,我々の日常的な店舗選択において考慮されている問題でもあります.毎日の買い物は近所のスーパーマーケットで,ちょっと出かけるときには鉄道や自動車で30分くらいの繁華街へ,さらに月1回くらいはデパートがいくつも集まっている大繁華街へ,という具合に,我々の買い物行動は商業集積の階層性によって規定されている部分があります.この階層性を空間として捉えた場合,一体どのような構成になっているのか,この問題をやはりGISを用いて分析した例があります.
また,都市内犯罪の分布パターンについても研究を行っています.一口に犯罪といっても,その発生パターンは様々です.そこで,東京近郊のある市における1年間の犯罪発生分布図を作成し,それぞれの犯罪についてその発生パターンを調べました.ここではひったくり,空き巣,車上狙い,自転車盗の4種類の犯罪を取り上げているのですが,それぞれ発生パターンが全く異なること,また,どのような場所で各犯罪が起きやすいかということを明らかにすることができました(例えば,空き巣は駐車場や空き地に隣接した住宅で起こりやすい,等).
少し変わったところでは,文部省科研プロジェクトの一つとして,イスラム地域研究へのGIS応用を行っています.この研究では,イスラム地域に起こった,或いは起こりつつある様々な空間的現象(気候などの自然現象,人口移動や土地利用変化などの社会現象)を分析するためのツールとしてGISを利用しています.例えば,下の図はインド・ポンネリ地域における3つのカースト(chetti:商人,shanan:酒職人,pariah:不可触民)の分布を表しています.これらカースト間の空間的分布にはどのような関係があるのか,自然・社会環境が与える影響は何か,といった問題をGISを用いて考えています.
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