人口減少の続く現在,都市施設の効率的な運用が強く求められています.利用者の減少した施設を統合し,限られた予算を有効に活用する必要があります.

公立学校は,少子化に合わせた統廃合が進められています.複数の学校を一つにまとめることで,効率化だけでなく,教育の質を高めようという狙いもあります.しかし,統廃合する学校の決定は容易ではありません.学校には,限界通学距離が定められており,遠距離通学をしなくて済むように,適切な間隔で配置しておく必要があります.学校定員や児童・生徒の分布など,地域の事情と合わせて勘案しながら,慎重な議論と計画立案が必要です.

下の左図は,仮想都市の小学校分布です.統廃合可能な小学校を考えるために,各小学校を中心とし,限界通学距離を半径とする円,即ち各小学校の通学可能区域を描いたのが右図です.

 
仮想都市の小学校分布
 
各小学校の通学可能区域

このままでは分かりにくいので,上の右図の各円に薄い色を付けたのが下の左図です.色の濃さは,各地域で通学可能な小学校の数を表すことになります.最も色の薄い地域は,通学可能な小学校が1つしかありません.その様な地域を通学可能区域に持つ小学校は,統廃合ができません.そのような学校を,この図では赤色の点で表しています.

通学可能小学校数の分布

この図を用いて,統廃合可能な小学校を考えてみます.仮に5つの小学校を統廃合の対象とすると,小学校の組み合わせは下の白点で表されたようになります.但しこれらは一例であり,実際には小学校の組み合わせは他にいくつもあります.

 
統廃合可能な小学校の分布
 
統廃合可能な小学校の分布

複数の計画案から一つを選ぶのは容易ではありません.そこで,計画立案を支援する手法を開発しました.この手法では,各小学校の生徒数や通学可能区域,生徒分布などに基づいた指標値をいくつか計算し,下左図のような地域カルテを作成します.この地域カルテを用いて,下右図のような計画候補を提案します.このような形であれば,様々な計画を比較検討する余地が残されますので,地域住民を含む集団での議論に役立つのではないかと考えています.

 
地域カルテ
 
計画候補

この手法は小学校に限らず,統廃合の対象となる様々な施設に適用することができます.柔軟な計画案を,分かりやすい形で提示する方法を考えています.

出典:貞広幸雄・貞広斎子・佐藤誠・多田明功 (2010): 人口減少に対応した施設再配置計画立案支援手法の開発 −距離・容量制約付き集合被覆問題としての定式化と応用, 計画行政, 33 (1), 75-81.