早川 裕一 (MC2)

■ 研究概要

川が大地を削るとき,滝の奏でる轟音は何を語るのか。岩盤河川のマクロな侵食プロセス,そしてその流域地形に果たす役割について,フィールド調査とGISを織り合わせ,等身大の視点と俯瞰的な視点の双方からアプローチし,大地の変化の謎に迫る。
日光,華厳滝.2001/10/24撮影 ©Y.HAYAKAWA
日光,華厳滝.(2001/10/24撮影)

滝の後退とその速度

 滝は山の中でごくありふれた,そして顕著な地形である。しかし,学術的な研究対象とされたことは意外に少なく,地形学的にも謎は多く残る。おまけに世間では,「滝は普通,断層運動によって生じる。」などという誤解も依然広く浸透したままで,たとえば日本の滝云々といった類の本に記された「滝の成因」などの項でも,かなりめちゃくちゃな説明ばかりが目立つ。
 一方で,カナダ・アメリカ国境のナイアガラ滝でよく知られているように,滝は侵食されるにつれて上流方向へ移動,すなわち後退することがある。また,その速度は河川による侵食作用の中でも特に大きいという報告がなされており,大地の変化を知る上で滝は非常に重要な地形であることが示唆されている。
 そこでまず,滝がどれほどの速さで後退しているのかの推定方法をいくつか提案した。さらに,岩石物性・流域特性・気候・滝の規模の各主要パラメータを物理的考察および次元解析を通してまとめた無次元パラメータを用い,後退速度を予察する経験式を導くことに成功した。この式は一般性をもつと考えられ,今後はより多くの滝への適用が望まれている。しかし,特に岩石物性の情報が不足しており,数多くの地点での岩石物性の定量化が望まれる。滝は岩盤が露出するところであることから,ロックコントロール(岩石制約論)の研究対象としても優れていると思われ,本研究を通して地形学におけるロックコントロール研究への貢献も可能であると考えられる。

関東北西の山地における遷急区間(knickzone)の分布図. ©Y.HAYAKAWA
関東北西の山地における遷急区間(knickzone)の分布図.

遷急区間の分布特性解析

 「遷急区間」(knickzone)とは,遷急点から発展された概念で,勾配がその上流,下流に比べて相対的に大きくなる河床の区間のことをいう。このうち顕著なものが滝であり,また峡谷となっていたりする。勾配が急な分,この区間では侵食が相対的に活発に行われていると考えられ,また滝が後退することと同じく,遷急区間の位置は上流へと移動することが推測される。遷急区間が通過すればその地点の河床は低下するので,谷壁斜面など周辺の地形へも影響を及ぼすだろう。
 こうした遷急区間の存在と地形的意義を明らかにするために,本研究では広域的な分布特性の解析をGIS(地理情報システム)を用いて行っている。具体的には,DEM(デジタル標高データ)から河床形状を抽出・解析して遷急区間の位置認定を行い,またDEMや地質図,気候図などから得たその他の地形・地質・気候・水文特性などとの関連を調査する。

礫の三次元幾何モデル. ©Y.HAYAKAWA
礫の三次元幾何モデル.

礫の三次元デジタル形状分析

 礫(レキ)は,それがどこで生まれ,どのように転がってきたのか,あるいは岩種などにより様々な形をとる。つまり,礫の形は様々な情報を包含しており,形状分析を行うことで地形学的な応用が可能になる。しかし従来,礫の形に関しては技術的な制約から,たとえばクルンバインの円磨度チャートなど,二次元に投影した上での議論が多かった。本研究では,レーザースキャナを用いて礫の三次元形状計測を行い,デジタルモデルを作成した。そこから,球形率,円磨度,表面粗度,楕円体率などの形状評価が進められている。

■ 研究成果

主要論文

Hayakawa, Y. and Matsukura, Y. (2003): Recession Rates of Waterfalls in Boso Peninsula, Japan, and a Predictive Equation. Earth Surface Processes and Landforms, 28, 675-684.

最近の学会発表

早川裕一(2003):DEMを用いた山地流域における河床遷急区間の分布特性解析.日本地理学会発表要旨集,64,113.

2003年10月12日-13日,日本地理学会2003年度秋季学術大会,岡山大学.

卒業論文

平成13(2001)年度 筑波大学第一学群自然学類(地球科学専攻)
Hayakawa, Y (2002): Rates of waterfall recession in Boso Peninsula, Japan.

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■ Message

2003.12.26
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