空間解析の手法の一つに,2つの空間現象の類似度評価があります.空間分布を比較し,その差異を数値で表すものです.
下の図は,2005年の千葉県における年齢階級別の人口分布です.この図を見ると,14歳以下の若年層人口と15-64歳人口の分布がよく似ているのに対し,65歳以上の高齢者人口が随分と異なっていることが分かります.
このような分布間の類似度を数値で表現するために,3つの指標値と,差異を地図の形で可視化する方法を考えてみました.
指標値の詳細については末尾の文献に譲り,ここでは可視化の例のみを以下に示します.
下左図は,仮想的な人口分布を表しており,色が赤に近いほど,人口は多いことを示しています.いま,左の1という人口分布を,その右の2a-2fの人口分布と比較します.このとき,1から2への変化を矢印で可視化したものが3a-3fです.()内の数字は分布の差異を表しており,値が大きいほど,差異が大きいことになります.
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2a |
2b |
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3a (2.443) |
3b (4.551) |
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1 |
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2c |
2d |
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3c (2.156) |
3d (4.621) |
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2e |
2f |
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3e (4.931) |
3f (6.659) |
1から2aへの変化は,都心に集中していた人口が徐々に郊外に分散していく様子と捉えることができます.3aの図は,それを矢印で的確に可視化しています.1から2bへの変化はスプロール化と呼ばれる現象ですが,それを可視化すると3bのようになります.2cは近年の都心回帰,2eや2fは都心が徐々に移動する様子を表しており,それぞれ2c-2fのように可視化されます.1の図を2群の図と比較すれば,私たちは頭の中に3群のようなイメージを描き,手書きでそれを示すことはできますが,実際にそれを自動的に計算し,数値に基づいて可視化する方法はありませんでした.3群のような可視化によって,より直感に近い類似度の把握が可能になります.
下の図は,千葉県の1970-2005年の人口分布の変化のうち,特に顕著であった5年間を可視化したものです.東京が郊外に拡大していた1970-1975年,郊外化のさらに進んだ1990-1995年,バブルがはじけた1995-2000年,都心回帰の2000-2005年と,各時期の人口分布の変化が的確に可視化されています.
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1970-1975年
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1990-1995年
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1995-2000年
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2000-2005年
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大量の空間データから的確な情報を抽出し,それを適切な形で可視化することが必要です.様々な可視化の手法を考えています.
出典:Sadahiro, Y. (2013): A method for comparing numerical variables defined in a region, Computers, Environment and Urban Systems, 41, 65-74.